卑しくも廃れた心持ち主は、同じ匂いのするモノに引力を有する。


塵置き場の鴉、壊れて放置された自転車、道端の下呂…。


目に映る全てが禍々しく、そして儚い。



俺は母親の死を知らされていない。というよりも伝える術がなかったのだろう。家には電話が無いのは勿論、ここ三週間は何処をどうほっつき歩いていたのか、家に居る事など皆無、電報を受け取る事さえ出来なかった。


良心の呵責と伸びた影を引きずりながら俺は力無くズルズルと、音を立てて歩く。


二日酔いのせいで空腹だが何も受け付け無い我が儘な胃が、キリキリと悲鳴を上げ嗚咽している。