供物に持って来た葱を手に取り帰ろうと立ち上がった時、ふと俺に名案が浮かんだ。



台所に向かい、葱を水でジャブジャブと洗いその中でも一番形の良い葱を適度な長さに包丁で切る。葱はタンと良い音を立てその身を二つにし、瑞々しい切り口をこれでもかと見せつけた。


次に冷蔵庫を物色しキリキリに冷えた瓶ビールを一本頂戴する。



葱とビールを持ち仏間に戻り、葱を線香の代わりに香炉にザクリと立てた。灰色の単調な灰に、白と緑の鮮やかな葱が驚く程に良く映える。


俺は瓶ビールの栓を抜き母の遺影に向かい乾杯をした。




後で帰宅して来るであろう厳格な父親がこれを発見し、激昂する。そこへ母親が何処からともなくやってきて父親を明るくなだめすかすのだ。



そんな妄想を思い浮かべながら俺は一人にやつきながら居間に戻った。