ここは町とは名ばかりの地で主要路を一つ中に入ると荒れ果てた砂利道が何処までも細く網目状に広がっている。


俺はこれからその内の一つを、歩いて実家へ向かわなければならない。


空高く在る太陽が俺の元へ紫外線と熱射、それに伴う疲労を供給する。加えて俺のくたびれた安靴が足元の砂利を一々大袈裟に捉え体力を消耗させる。ジワリジワリと毛穴という毛穴から玉の汗が出て顔全体を覆い、やがてそれは繋がり、流れ、服や地面に一体化されてゆく。


たまらず小さな木陰に身を縮め、懐から出した歪んだ煙草に火をやった。


火を得た煙草は俺の体内に至福のニコチンとタールを流入させるが、如何せん二日酔いという奴はいけ好かなく、全ての感覚をモヤモヤと不気味な霧の中へ隠してしまう。俺の舌はまるで薄布を被せた様にぼんやりと感じる事しか出来ないのだった。