幾分かの睡眠を取ったが所詮は電車内。徹夜で娯楽に勤しんだ俺の体には決して十分と言えるものではなかった。


しかし下車の時が近づいたので座席を元に戻し、眠気覚ましに思い切り欠伸をした。


隣席に放置した葱を握りしめ、下車。


そこから電車を乗り換え、暫し揺られると俺の実家の最寄りの駅へ到着する。


棺桶に両足を突っ込んだ様な駅員すら居ない田舎。


ここへ来たのは数年振りだが呆れる程何一つ変化など無い。


駅は木造の建物で歩けばギィと鳴り、隅には一斗缶で作られた灰皿から湿った煙草が溢れ酷い悪臭を放つ。誰かが入り口に置いた瀬戸物の猫はまるでハチ公の様に永遠に来ない主人を待ち続けている。