「ど、どうしたの?」
「家の近くまで送らせて下さい。」
「えっ?あれ?深川さんは?話ししてたんじゃないの?」
驚いた私に、少しつまらなさそうな表情を見せた彼。
「なんで気づいてくれないかなぁ?
買い物なんてあなたに会いたい口実に決まってる。」
「えっ…?そ、そうなの?」
思いもよらない言葉に流石に私も動揺を隠しきれずにパッと視線を逸らした。
「わざわざこの時間に目覚ましかけて起きてきたんですよ?
ご褒美が欲しい。」
「えっ?ご褒美?!」
そんな事を急に言われても思い付かない私に
彼は左手をそっと差し出した。
「手、繋いで下さい。」
「手?」
「そう、ご褒美。」
優しく笑う彼を見て、恥ずかしさが止まらない。
さっきまで昔の事を思い出して世界一、切ない気分でいたのに…
今の私は小関君のおかげで
ほんの少し…
けっこう…
幸せな気分になっていた。


