「やっぱり来てくれた。」
嬉しそうに笑う小関君の腕の中で
涙さえも流せずにひたすら唇を噛み続けていた。
「近いうちに、若月さんのほうから俺んとこに来てくれるって信じてた。」
優しい温もりが、ゆっくり長い黒髪を撫でてくれると
私はゆっくり瞼を閉じて、穏やかに一定のリズムを刻む彼の鼓動を聞いていた。
私はまんまと小関君の期待に応えてしまったっていうわけか…
苦笑う事もできずにいる私は、もう全てを失ったのと同じだった。
「小関君は…なんで私だったの?
私なんて旦那にも愛されない女なんだよ?」
「それは旦那さんの運命の人があなたじゃなかったからだよ」髪を撫でる手を止める事も無く囁いた。


