SWEET BUTTERFLY



こうでもしない限り、千歌が自分から起きてくるなんて有り得ない。


もともと、昼寝をしない子だから夜寝たら起こさない限りは昼まで寝てる。


なんとも子供らしからぬ3歳児。



千歌を起こして30分が経った頃、ようやく起動を初めたクリクリのお目めが私を追いかける。


「ママぁ…いってらっしゃい。」


目が合った瞬間、意味の分からん言葉。


「ん?何が?」


「お仕事からいってらっしゃい。」


私の足りない脳みそがふる回転で彼女の言葉を解読し始める。


きっと昨夜、千歌が眠る頃にバイトに出かけた私を思い出して、「お帰りなさい」を言ってるつもりなのか…


「…ただいま。」と自信なさ気に呟いた私に向かって千歌が両手を差し出した。