結局、私は予定ではまだ寝てる時間に、一人でお店のカウンターに立っていた。
外は雨が降っていて、もしかしたらあの客は来ないかもしれないと思っていた。
来なきゃ来ないで店を閉めるが、せっかく休日返上したんだから、何があっても来てもらいたいもんだ…。
一通りの掃除が終わって、棚に並べられてるグラスを念入りに拭いていると
店のドアに賭けられた鈴が小さくなった。
やっぱり来たんだ。
振り返ると、いつもの彼が今日は珍しく浮かない顔で一人で来たんだ。
「いらっしゃいませ…」
いつもならすぐにマスターを探す彼が、今日はだんまりを決め込んだまま静かにカウンターに座った。


