SWEET BUTTERFLY



別に好きだったわけじゃない。


当時私にも彼氏と呼べる人はいたから。


ただ、面白くなかったのは、大翔がマスターに見せる人懐っこい笑顔を知っているのは私だけなんだと思っていたから…。


彼女の横で終始にこやかに笑う彼の笑顔が少しだらしなく見えただけ。


「あれ?今日、マスターは?」


カウンターに座った彼が、少しせっかちに私に聞いた。


「奥さんの体調が悪くて付き添いで病院に行ってます。」


そっかぁ…と呟いた彼がとても残念そうに隣の彼女に「せっかく来てもらったのに紹介できなくてごめんね。」と呟いた。


私はその光景を見ながら、ただただ面白くなくて、注文のコーヒーを並べると店内の掃除をしながら時間を潰した。