高校卒業後、希望していた職場の内定をもらえなかった私は
地元の小さな喫茶店の求人の貼紙を見つけてアルバイトをしていた。
大翔はそこの常連客だったんだ。
個人経営の寂れた喫茶店には新規の客なんてなかなか来なくて、常連客の顔はすぐに覚えた。
大翔は平日決まった時間に必ずコーヒーを飲みに来た。
経営者のマスターとは仲が良くて、いつもカウンターで二人で話しているのを見ていたっけ…。
ただ、そんな毎日が数年過ぎた頃
マスターの奥さんが体調を悪くして、私一人でその日は店番をしていたんだ。
そんな日、初めて大翔は女性を連れて来た。
身長の高い大翔に負けず劣らずの背の高い女性は、綺麗な黒髪を一つに束ねて、清潔感溢れる真っ白なブラウスにグレーのカーディガンを羽織っていた。
私はその女性に見覚えを感じながらも
大翔が初めて女性を連れて来た事に少しだけ気分が悪かった。


