陸は、殴られた口元に触れて、苦笑いした。
「私、傷付いてなんかないよ。陸のおかげでレナと仲直りできたもん!」
陸は、手に付いた血を見て、手を洗う。
「レナ…泣いてた?」
「ううん。泣かなかった。俺がレナを好きじゃないことはわかってたって。俺、最低だな!」
陸は、鼻を触りながら、床に視線を落とす。
部屋の中には私と陸しかいない。
「レナ、教室で泣いてたことがあったんだ。陸が自分を好きじゃないこと気付いてるけど、それでもいいから一緒にいたいって…」
私は、あのレナの涙を忘れないだろう。
恋する女の子の、切ない涙を…
「俺、あいついっぱい傷つけた。俺、まこを守る方法が他に思いつかなくて…本当に俺、ばかだよな…」
陸は、ベッド横のカーテンを右手で、さっと揺らした。
そして、その右手で自分の左手のてのひらを殴った。
「ほんと、ばかだよ!でも、ありがとう。私を守ってくれてありがとう。」
私は、陸の揺らしたカーテンに触れた。

