心配で陸に駆け寄る私に、陸は、無理して笑顔を作る。
「ちょ…っとな、龍之介に殴られちゃった。」
笑うと口元が痛むのか、陸は顔を歪ませた。
「ちょうどいいわ。ここは保健室だからちゃんと治療してあげる。里中先生、神崎君を押さえてて!」
私は陸の顔にそっと手を当てた。
初めて触れる大好きな人の頬。
きっと1発じゃないと思う。
何発か殴られたんだ…
でも陸の表情からは、龍之介の間にモヤモヤしたものは残っていないように感じた。
「いってぇ!!痛いよ、先生!」
龍之介に殴られたと聞いた瞬間、私の頭に浮かんだのはレナだった。
2人の喧嘩の原因に、レナのことが関係していることは明らかだ。
「俺、別れてきた。ちゃんと謝ってきた。お前が教室で話してくれたように、ここでの思い出を良いものにしたいからさ。レナに、これ以上嘘つき続けることはできない。」
陸は、口元をガーゼで消毒してもらいながら、目だけ私の方に向けた。

