陸の席を見た。
体育館シューズが置かれた陸の椅子。
靴ひもがほどけたままだった。
この体育館シューズを履いて、陸は体育館を走り回ってるんだね。
陸の物は、全部が愛しいよ。
陸の体育館シューズの靴ひもをこっそりと結んだ。
『陸、私を忘れないで…』
そう心の中で囁きながら、ゆっくりと結んだ。
あ…!!
机の上に忘れ物が…
いつか見た自転車の鍵。
かわいいクマのキーホルダーのついた鍵。
陸、鍵を忘れたままでどうやって帰ったんだろう…
それとも、まだ校内にいるのかな。
窓を開け、校門を見た。
たくさんの生徒が、笑いながら下校する様子が見えた。
ガラ!!!
教室のドアが開く音に振り返る。

