「待って!神崎君!」




大きな声が出ちゃった私は我に返り赤面する。



カーテンを開けて、子犬のような目で私を見る陸。



「城山先生、私…神崎君に送ってもらいます。あの…私、車酔いするので。」



こんなときに回転の速い脳に感謝する。



「酔っても構わない。私の車で帰りなさい。」


テカテカ黒光りした髪の毛、銀ぶちメガネ。

きっちり着こなした服。


全部大嫌い。


どれもこれも、私の体が拒否反応を示してる。



「車、いやだって言ってんだから、もういいんじゃないですか。」



睨むような目で城山をチラっと見て、陸はベッドの横の丸いすに再び腰掛けた。



「なんだ、お前その態度は。里中君、神崎には気をつけたほうがいい。放課後までによく考えなさい。7時迄残っているから、送って欲しかったら職員室へ来なさい。」


上から目線なその態度に、顔面パンチしたい!!


「神崎、変な事するんじゃないぞ。里中先生は、お前の姉ちゃんみたいに軽くはないんだ。」



不気味な笑みを浮かべながら、去っていった。



意味深な城山のセリフ…陸のお姉さんってどういうこと?




陸は右手をぐっと握り締めて小さく震えてた。


怒ってるんだ。

きっと、とても傷付いている。



城山の言ったお姉さんのこと、陸は怒ってる。


「あいつ、マジうぜーよ。絶対許せねぇ。」


一言一言を噛み締めるように、怒りを込めて陸は言った。