「今日は何か予定があるんですか?良かったらこれからお食事でも行きません?」

無邪気にそう訊いてくる彼女を断るのは、とても胸が痛んだが、仕方が無い。

「すみません……先客が入ってまして……。」
「そうですか……。」

しゅんと俯いてしまうのが、空気で分かる。

前回も断っているのが非常に辛いところだ。

僕だって出来れば室井さんと楽しく夕食を過ごしたいが、まさか「今から女性と会うんですが、一緒に来ますか?」とは言えない。

僕が「次こそは必ず埋め合わせしますから」と、両手を合わせて謝ると、室井さんは「絶対ですよ♪」と少し元気を取り戻したように言ってくれた。

その声に、陰りが見えたような気がしたのは、只の気のせいであって欲しいと思った。