「本当に一人で大丈夫なの?」

母さんが、心配そうな声で妹に再三再四訊いた。

「大丈夫だって!ここより田舎だし、ちょっと不便な事もあるかもだけど、慣れちゃえば平気だよ。」

ホント、母さんは心配性なんだからと、妹は苦笑した。

「辛くなったら電話するんだぞ。」

父さんは心無しか涙声だ。

こういう台詞は、大抵親の優しさ半分、寂しさ半分が配合されていて、実際に聞くと居た堪れなくなる。

いや、僕も同じ気持ちだからか。

玄関先で妹を見送る僕等は、それ以上言葉が出なくなってしまった。

「もう!皆してしんみりしないでよ!明るくお見送りの約束でしょう?」

なんて陽気に言う妹も、困ったような複雑な心境なのが空気で伝わる。

一拍置いて、もう雑音も耳に入らなくなってきた頃、僕が右脇に抱えていた少し大きめのボストンバッグから重さが消えた。

妹が、僕から荷物を引き取ったのだろう。

それが別れの合図になった。