テレサは頭を抱えて座り込んだ。

どうやら盗人に裏切られた(テレサが安易にだまされただけだが)ショックで頭がついていかないらしい。

ブリュンは煌めく刄を地面に突き刺す。

「で、追うのか?追わないのか?」

ブリュンの低い声にテレサはようやく立ち上がる。

そして顔を上げると。

「あんの腐れカスめが、人の親切を踏み躙るとは、許せない……

見つけだしてギッチョンギチョンにして、来世の春まで後悔させてやるわ!!!」

(来世の春まで……?)

テレサはローブを乱暴に脱ぎ捨てる。

白い半袖のシャツには可愛らしい水色ドットのアクセントが施してあり、短パンから覗くしなやかな肢体がなやめかしい。

何より目を引いたのはその手に握られた薔薇を模した杖である。

凄まじいフォースがその薔薇の杖から放たれていた。

テレサは詠唱を始める。

まるで歌のような詠唱に乗り、研ぎ澄まされたフォースが辺りを震えさせていく。

木々が揺れた。





「おいで……"歌に愛されし遊女"『ムーサ』!!」