「で?そいつの居場所は?

まさか廃陸の旅団ともあろう奴らが、女1人の尻尾も掴めない、なんてことは無いだろ?」

挑発するジンにホセは声を出して笑った。

「がっはっはっは。愚問だな、新しい団長。

そいつはどうやら数刻前に海底都市のフィンダー海峡に向かったらしい」

「フィンダー海峡?なんだってそんな辺鄙な場所に」

フィンダー海峡は海底都市の中でもまだ未開拓の偏狭の地である。

そこには数多くの魔物が住み着き、近づく人間を食らい尽くすと恐れられていた。

「どうやらローゼン・シュトックは慈善活動を好む様ですね。

フィンダー海峡には超巨大な海蛇がしばしば目撃されています。恐らくは海蛇を退治しに向かっているのでしょう」

「ふーん。じゃあ早速出てくるよ」

そう言って部屋を出ていこうとしたジン。

背後からの異様なフォースに足を止めた。

「お待ちくださいジン様」

シルファから発せられる尋常ではないフォース。

ジンは身構える。

「おいでなさい『シグマ』」

シルファの伸ばした手の先に、混沌の闇が渦を巻きながら現れる。

そこから聞こえる不快な声。

「シグマ……お食べなさい」

闇の中から現れた顔の無い巨大な怪物がジンを一瞬にして飲み込んでしまった。