キミへ


『次は男子競技です。男子の皆さんは素早く移動して下さい』



あ、やべっ

さぼろーと思ったのに、サボれねぇ競技じゃん!



「俺グランド戻るわ」

「あっ、うん。」



俺は杏菜に背を向けて走った。



「怜衣!!」



杏菜にそう叫ばれてビクッとしながら振り向いた。



「がんばってね!」



はにかむように笑う杏菜に、俺は見惚れた。

あー…、これかなり重症じゃねぇ?



「おう!!」



手を振ってまた走った。

正直、俺だけを応援してくれたんだって思うと嬉しかった。

玲音でも、龍でも、イタチでも、他の男じゃなくて俺なんだって思うと、優越感に浸れた。



「ちょっと怜衣、頬筋緩みまくってっけど?」

「へへ、バレた?」

「お前ー! 何か良いことあったなぁ!?」



あったけど、誰が言うかよ。

杏菜はぜってー誰にも渡さない。

玲音にも、龍にも、イタチにも。




−怜衣side end−