「杏菜」
そう声が聞こえたけど、全力疾走しすぎて疲れたあたしは頭を上げれないでいた。
それに、聞き慣れた声だし。
「杏菜ー?」
「…………何」
「うわ、その間何?」
ほらね、こんな返事するの、怜衣しかいないもん。
「…………。」
「そ、そんな睨むなって…」
顔を少し上げて睨み上げていたら苦笑いしながらそう言った。
「はぁ…」
「傷つくよー?」
ついとけよ、なんて思いながらさっきより優しめ(自分で思うに)で『何?』と聞いた。
ちゃんと疑問系にしたよー。
「お疲れさん。頑張ったな」
「っ!!」
クシャクシャと頭を撫でる怜衣。
や……、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!

