それはあたしと拓真が5歳の時。

あたしがまだ社交界からいなくなる前。

拓真はかわいいもの好きで、それは上に姉さんたちがいたからっていうのもあって服はよくフリルやレースのついた可愛らしい服を着ていた。

まあ、属にいうゴスロリって服ね。

他の同年代の男の子たちが着たら似合わないけれど、拓真はそれがすごく似合っていた。

そのせいでよく、いじめられもした。



「女みたいな格好しやがって!」

「やーい男女男女!」

「変なのー!」



拓真は蹴られても殴られても、泣くだけで何もしなかった。

そこにあたしがたまたま通り掛かった。



「ちょっと、何男が3人寄って集って1人をいじめてるのよ」

「うわ、間宮だ!」

「い、行こう!」



バタバタと忙しなく走っていき、あたしは溜め息をついた。



「大丈夫?」

「……ひっく」



あたしは近くにあった飲み水場のところへ行き、ハンカチを濡らした。



「しみる…?」



手を握り、ハンカチを怪我に当てるとビクリと肩を揺らしたのでそう聞くと、拓真はもっと泣き出してしまった。

そんなに、痛かっただろうか…。



「うっ…うぅ…」

「…泣いてちゃわかんないよ」



優しく、でも厳しくそう言った。

顔の怪我にハンカチを当てようとすると、その手を握られる。



「!」

「…あり…がと…う」



途切れ途切れに紡ぐ言葉を聞き取るのがやっとだった。



「…拓真くん、だっけ?別におかしいところなんて何もないよ。人は人。自分は自分なんだから。あんまり人の言葉を真に受けちゃ、だめだよ?」



そう言うと、こくりと頷いた。


――これが、あたしと拓真の出会い。