日記の中身は、信一郎の野望で、埋め尽されていた。
 驚くべき経緯である。

 酒屋では、この先、やっていけないこと。
 スーパーに建て替えるべきであること。
 その為に、良い土地を探すこと。

 良い土地は見付かったこと。
 幼馴染みの秋史の家であること。

 都合の良いことに、頑固な秋史の父親が亡くなったこと。
 後家が相手なら、お酒抜きに、少しは話を聞いて貰えるのではないかということ。
 土地の交渉に入りたいところだが、金がないこと。
 今の店と土地を担保に、金を借りられないかということ。
 金ならどうとでもなる、ということ。
 問題は、信一郎の前に立ちはだかる人のこと。

 親父を説得すること。
 親父に、店を継いでほしいなら、今実質的に手にしたいと、迫ったこと。
 父が担保を認めたこと。
 早速、手続きに取り掛かること。

 秋史の叔父が居座っていること。
 また、信一郎を遮る男だったこと。
 いなくならないものか、と考えたこと。

 凪子が欲しくなったこと。
 凪子を味方に引き込めば、何とかなるのではないか、と思ったこと。

 凪子との関係が絶望的になったこと。
 秋史の叔父も話にならない人間であること。
 後家は秋史の叔父の言いなりであること。

 秋史が何処へ行ったのか、と考えたこと。実家へ帰ってこないのか、と思ったこと。

 偶然にも、秋史から連絡をもらったこと。
 かなり酔っているようだったこと。
 叔父が邪魔であるらしいこと。

 もし、秋史が実家を引き継いだら、俺の話を聞いてくれるのか、確認したこと。
 秋史は話を聞いても良いと言ったこと。
 秋史の代になれば、まともに話を聞いてくれそうであること。