俺は先輩に誘われるまま、
2人で旧校舎の、とある教室の、
ロッカーの中に入っている。
恐らく、先輩の話のロッカーだ。
「それでね、その生徒を閉じ込めた
加害者側の生徒なんだけど。
その生徒の1人が、俺の父親なんだ」
狭く薄暗い中で、唯一見える、
先輩の口元には、笑みが浮かんでいた。
「まあ、嘘だけど」
そう言って、先輩の話は終わった。
だけど、気になる事がある。
最後の『嘘だけど』
それは、一体どこにかかるんだろうか。
いつもの通り、話の全て?
もしくは、最後の先輩のお父さんの事?
それとも、最初の『嘘なんだけどね』?
あと、もう1つ。
さっきから1人分、
呼吸音が多くないですか?
俺の、耳元で。