「くそ、なにが……」
落馬した二人がよろよろと立ち上がる。
馬に乗っていたため、真っ先に来たのは自分たちだ。なのにこのざま、馬が倒れたのだ、いきなり。
これもまた、林太郎の技であった。
“花折り”(はなおり)。
峰打ちによる打撲撃。時には骨折すらもさせるが、馬が立ち上がったところを見るとどうやら手加減はしたらしい。
言うのは簡単だが、これだけの短時間でそれを行なったのはもはや匠、達人を超えた神の領域だ。
「引きな、見逃してやる。腕ぇ、磨いてから、また挑戦するこった」
ぐっ、と立ち上がる侍はうめいたが、実力の差など痛感したに違いない。
何せ二人は、林太郎が刀を抜いた瞬間を見ていないのだから。
くそ、と呻いて、侍たちは逃げていった。傷をおったものに肩を貸しながら。


