涙なんか出てないが、場面的にそうした方がカッコイイーキャー、となるため帝は目をこすってみせた。
「へ、目から汗がで――」
「いたぞー、あそこだー!」
帝のシーンをぶち壊しにする声が乱入した。
見れば、先ほどの侍どもが、仲間をつれてやってきた。
馬にまたがるのが二人に、地を走るのが三人。
「んだよ、まじ空気読めよ!俺の感動の名シーンを」
「問答無用!」
らしく、侍たちはいきなり襲いかかってきた。
帝に振り向けられた刀を避ける技術はない。
後方、林太郎が手を伸ばして帝を引き寄せた。
鼻先にしゅっ、と風が切れたのを感じた。
んが、の口のまま見ていれば、林太郎が強引に帝を後ろに放る。


