目を細めても城はない。


「ちっ、魔王め。ステルスか、やるな」


自分勝手にことを考えていくうちに、じゃ、じゃ、じゃ、と土を蹴る音がした。


見てみれば、遠くから馬がかけてくる。


「聖騎士か!」


残念、聖騎士というジャンルとは程遠いものだった。


黒い甲冑を着た侍が馬に乗っていた。通り道だったか、帝の前を通り過ぎようとしたが。


「止まれぃ」


手綱を引き、馬がこちらに戻ってきた。


二頭の馬に、二人の侍。


「はあ、分かってねえなあ。英雄たる俺に相応しいのはやっぱりパラディンでしょ。刀じゃなくて、西洋剣がいいなあ」


「貴様、なにやつ!」


「名を名乗れ!」


「ふっ、名を聞く前にまず自分からと習わなかったのか、ベイビー?」