彼女の答えにふうんと男は口をあける。
「面白い答えだ。いいね、ティラティール。君は私のお気に入りになったよ、殺さないであげよう」
「私が貴様を殺すとしてもか」
「構わないよ。どうせ、“殺せない”だろうから」
にっこり微笑む男が背を向けようとして。
「そうだ、私の名前、ビギナーって言うんだ。死ぬ寸前まで君の記憶にあると嬉しいな」
「ヘドが出るな」
吐き捨てる彼女のセリフにもビギナーは、笑顔を崩さなかった。
今度こそ、本当に背を向けた。かつかつと歩いていく。
「……、くそが」
小声で呟く彼女。
初めての任務失敗だ。でも、彼女を責めることはできない。
殺せない奴を殺せというのが無理な話なのだから。
帰りたかった。彼女に寄り添って。
「終わりだと思うなよ」