微動だにしないが、僕の警戒に気づいてはくれただろう。


やがて、そいつは現れた。


赤い髪に赤い服。


腰には大きな剣をぶらさげて、かつかつと歩いていた。


今日の獲物の特徴と合致する。


ある村で殺戮の限りを尽くした男。久々にやりがいあるクズだと、ティーは笑っていた。


僕たちがいるビルの前を通りすぎようとし。


――銃声。


ざくろを潰したみたいに、獲物の頭から赤が吹き出た。


倒れる。倒れたところに更に三発、ティーは引き金を引いた。


頭、胴体二発。殺したところではない、オーバーキルだ。


男が立ち上がらないのを十秒で確認し、ティーはやっと体を立たせた。


んーと背伸びを軽くして、ライフルをアタッシュケース――パンドラの箱と言われる黒塗りの大きなケースに入れた。