僕はあの後、黒猫の倉庫を出た。


僕の中で堅く揺るぐことのない想いが、崩れてしまいそうだったから…



「‥アイツ等のこと、どうしますか」

「…子猫?」

「はい。たぶん、アイツ等が帰る家なんて、ないですよ‥」



黒猫に集まる子猫達は、基本的に親がいない子や施設にいた子。



「…探してあげなきゃ」

「りー、俺思ったんですが‥」



或は空を見上げて呟いた。



「浬音がよく行くと言っていた和菓子屋さんに、蜜夜(ミツヤ)と蜜季(ツミキ)を雇ってもらったら‥どうでしょうか」

「蜜夜と蜜季を?」

「はい」



蜜夜と蜜季とは、二歳差の兄弟。

蜜夜が兄で、蜜季が弟。


2人とも器用で、和菓子好き。



「‥いいかも」

「頼んでみませんか?」

「うん。僕、行ってみるよ」