「何をしている倉本」


低い低い声。

倉本先生の体が、ゆっくりと私から離される。


「あーあ、良いとこだったのに……邪魔すんなよ」


先生が向いている方向……第一自習室の扉へと私も視線を向ける。


「ふざけるな」


冷たい冷たい声。


「ここが学校だと言うことを、まさか忘れたワケじゃないだろうな?」


銀縁の眼鏡から覗く、ブラウンの瞳が細められた。


「お前は昔からそうだったが、節操がなさすぎる」


コツリと一歩、第一自習室へと足を踏み入れた。