「少し、昔話しをしようか」 保健室から一時静かな廊下を歩いた所で、突然、緒方先生がそう言った。 「昔話し……?」 「この高校でのコトだ」 カツンカツン。 靴の音が、鳴り響く。 「この高校で昔、ある男子生徒と女教師が付き合っていた……恋人同士だった話しだ」 「え……っ」 「男子生徒は、その女教師が好きだった。倉本みたいに、愛してると言っていた」 カツンカツン。 その音は、速まるコトも遅くなるコトもない。