飛べない黒猫

窓から朝の光が差し込む。

真央はむっくりとベットから起き上がった。


辺りを見回し、何故、自分がベットに寝ていて、蓮が机にいるのか思い出そうとした。


“…わからない。”


夜中に蓮が起きて、仕事をした。
そして自分は、寝ぼけてベットに這い上がり、そのまま寝ていた。


“きっと、こんな感じ…”



真央は枕元に落ちているペンダントを手に取ると、自分の首にかけ、そっとベットから這い出した。

喉が渇いていた。


昨日の午後から、何も食べていなかった事に気づく。




家の中はシン…と、静まり返っていた。

皆を起こさないように、足音を立てずに廊下を歩く。




キッチンへ行くと、カウンターにサンドイッチがのっていた。

ラップの上にメモが置かれている。


蓮、真央ちゃんへ
おなか減ったでしょう?
食べてね。
冷蔵庫にサラダが入ってます。


真央は、メモを付けたままサンドイッチとサラダを盆に乗せ、ケトルでお湯を沸かした。



蓮は朝起きると必ず珈琲を飲む。
しかも、とびきり濃いやつ。


25グラムの珈琲豆を挽いてフィルターに入れ、お湯を少し入れて蒸らす。
1分蒸らしたら、ゆっくり円を描きながらお湯を注ぐ。

蓮の珈琲カップは100㏄入る。
お湯の量はこれがベストだと言っていた。


いつも入れているのを見ていたから、手順は覚えている。

思い出しながら用意した珈琲と、自分用のオレンジジュースを盆に置いて部屋に運んだ。