飛べない黒猫

窓の外が白みはじめて、鳥のさえずりが聞こえてきた。
一睡も出来ないまま、洋子はベッドがら窓を眺めた。


「少し寝たらいいよ、今日は日曜だ、仕事も無いんだろう?」


赤く腫れた目で、洋子は青田に微笑む。


「そうね…」


洋子は布団を首まで引き上げた。


「蓮くんなら大丈夫だよ…。
真央も付いてるし、心配ない。」


青田は低い落ち着いた声で言った。


「蓮くんと真央は似たところがあるから…
お互いの痛みを分かりあえるんだろうね、きっと。
だから、真央は蓮くんの側を離れないし、蓮くんも拒絶しないのだろう。」


「えぇ、蓮は、人と関わる事をあんなに嫌ってたのに…
真央ちゃんには違ってて。
最初は、あたし達の為に気を使っているのかと思ってたけど、そうじゃ無かった。」


「真央だってそうだ。
あんなに早く蓮くんに心を開いた。
2人の信頼関係は、わたし達が思う以上に強いのかもしれないね。」




蓮が部屋に行ってしばらくすると、クロオを抱いた真央がスタスタと蓮の部屋に入って行った。
数時間たっても静かなままで、心配になった2人は蓮の部屋を覗いてみた。

真っ暗になった部屋の中、背中を向けて寝る蓮の傍らで、ベッドに寄りかかって寝ている真央の姿があった。


もしかしたら蓮が起きて来るかもしれないと、2人は居間にいた。

だか部屋のドアは開くことなく、つい先ほど2人は寝室へ来たのだった。
その際に、ドアが少し開いている蓮の部屋の前に立った。

一度起きた様子の蓮は、椅子に座ったままパソコン机に身を伏せて寝ていた。
真央はベッドに横になり毛布にくるまって丸くなっている。

クロオだけが気配を感じ首を上げ、ドアから覗く2人を見ていた。




「あたしも、そう思うわ。
人を恐れていたのは真央ちゃんだけじゃない…
蓮もなの。
だから彼には、信頼しあえる存在の真央ちゃんが必要なのね。」


洋子は静かに言って、目を閉じた。