飛べない黒猫

洋子が用意していったのだろう。

蓮は日中寝てたり、打合せで出かけた際に食事を済ませたりと不規則。

せっかく作ってもらっても無駄になることが多いし、簡単な料理は自分で作れる。
なので、食事の用意は不要としていた。



真央はサンドイッチの皿を両手で持ち上げ、蓮にさしだした。


「食べていいの?」


蓮の問い掛けに、ニッコリとうなづく。


「さんきゅ。
お昼は俺が何か作ってあげるね。
今日は仕事お休みなのさ、いいでしょ。」


隣に座ってパンにかぶりつく。


「ステンドグラスのデザイン?
キレイだね…」


スケッチブックを見る。
真央は微笑んでキッチンへ行った。



真央の作る作品は、今まで見たことがあるステンドグラスの作品とは違っていた。
とにかく、細かいのだ。

細部まで手の込んだデザイン。
そのデザイン性の美しさは、息を呑むほどなのだ。

くわえて、繊細な作業の完成度。
細かい型を作り、それに合わせて小さくガラスを切り繋げていくのだ。

気の遠くなるような作業が、素人の蓮にも想像できる程だった。



蓮の手元に、コトッとマグカップが置かれた。
紅茶が、なみなみと注がれていた。


「あっ、入れてくれたの?
気が利くなぁ…ありがとう。」



大事に育てられたお嬢様。
その割には、周りに気を使うし、反抗的でない。

蓮には、それが、かえって心配だった。




真央のもう片方の手には、自分の分のマグカップ。
椅子に座り、ふうふうと冷ましながら啜りはじめた。