飛べない黒猫

真央は目を伏せてつぶやいた。


「たぶん…ドロドロした男と女の愛憎。」


「…」


「あっははは!
そりゃいい。」


蓮は真央を抱きしめ、真央の肩に、そっと額をあてた。


「そばにいるよ、真央…
だけど待っててよ。
俺も強くなって、
その…ドロドロした男と女の愛憎に答えるから。」


真央の頬を、蓮の柔らかな赤い髪が撫でる。


「うん…待つよ。」


蓮はゆっくり身体を離して真央を見つめる。

真央は、深い緑色の瞳にキスをした。






「どのくらい待てば強くなる?」


真央は蓮の髪をそっと撫でる。


「俺が大人になるまでかな。」


蓮は真央をじっと見つめたまま微笑む。


「やれやれ…
まだまだ、先だね。」


真央が蓮の口調をまねて溜息まじりにつぶやくと、蓮は声をあげて笑った。