飛べない黒猫

「喧嘩したから、お互いの気持ち伝えられたんだね。」


蓮はそう言って苦笑いした。


「俺より真央の方が、強くなってしまったみたいだ。
負けていられないな、俺も。」


「わたしが?
違う、違う…強くなんか無い。」


「いや、強いよ。
真央は美香ちゃんと対立した。
自分の意志を、相手に伝える努力をしたんだ。
その結果が、今の関係。
自分の気持ちが相手に伝わり、相手の気持ちも自分に伝わった。」





俺はどうだ…
未だに自分の殻を破らない。

自分の意志を、誰かに伝えたか?

いいや…
対立すら避けて、誰とも向き合う気が無かったんだ。




「じゃあ、それは、きっと…
蓮がいてくれたからだよ。
蓮が側にいてくれたから、わたし強くなったの。」


真央はベッドから立ち上がり、椅子に座る蓮の前に歩み寄った。


「ヤキモチ…
美香ちゃんが蓮に甘えたり、蓮の腕を組んだりするから、わたしヤキモチ妬いたの。
それで、美香ちゃんが憎らしくなって喧嘩したんだよ。
美香ちゃんに取られてしまうと思って…
だって、ずっと蓮と一緒にいたいもん。
蓮が好きな人出来るまで、わたしの側にいて欲しいの。」


大きな黒い瞳が、じっと蓮を見つめる。

一瞬、意識が飛んだ。


「あー、えぇと…
真央、それはピュアでスイートな愛の告白?
それとも、大好きなお兄ちゃんに対するファミリー的な親愛?」