飛べない黒猫

一通りゲームの使い方を教えた美香は、大福を頬張る。


「うん、この粒あんのプツプツ感と、程よい甘さが絶妙なのよね。
はら、真央ちゃんも食べてごらん。
この前、食べたいって言ってたでしょ?」


美香から手渡された大福をパクっと食べる。
真央は美香を見た。


「おもち…やわらかいね。
あんこ美味しい。」


2人は顔を見合わせて笑う。


「美香ちゃんは、渋いもの好きなんだ。
君らくらいの年のコは、ケーキとかプリンが好きだと思ってた。」


「あははっ!違うの、蓮さん。
あのね、真央ちゃんとヤキモチの話をしてたら、美味しい大福を思い出ちゃって。
それで今度食べようねって約束したから買ってきたの。」


「ヤキモチ?」


「そっ、ヤキモチ。
これ以上は、女子トークだから話せないけど。
ねーっ、真央ちゃん。」


「そっ、女子トーク、ねーっ」


真央も美香の言葉を真似て発音した。
頬を赤らめ、パチパチと大きな目を瞬く。

真央が喜んでいる時に見せる興奮の表情。


「はは…そーですか。
女子同士、どんどん盛り上がって。
真央は同世代の子と話す機会が無いからね。」


「そーなの、そこが大事なの、真央ちゃんには!」


美香が湯のみをトンっと置き、蓮に向き直る。


「真央ちゃん、何にも知らないんだよ。
お洋服は可愛いから合格だけど、後は全然ダメ…
お化粧だって出来ないし、karaもAKBもわかってない!
信じられないよ。
しかも、携帯持ってないんだよ!
これじゃ、今の世の中生きていけないって…
ふつうじゃないよ。
これでいいの?」