飛べない黒猫

「あっ、なんか、いるよ。
うわっ、これ…えいっ!
あれ…?落ちちゃった…
えーと…美香ちゃん、次は、どうするの?」


美香が画面を覗き込む。


「あーあ、やられたんだよ、それ…
真央ちゃんセンスないんだから。」


「違うもん!
初めてだから、しょうがないの。
美香ちゃんだって、最初はヘタだったでしょ?」


真央はムキになって美香に食ってかかる。

珍しい光景。
真央は普段、誰に対しても口答えなどしない。


「残念でした!
あたしは最初っから、上手だったわ。
あっ…ねぇ、蓮さん、
美香ね、見たい映画があるの。
来週3人で見に行きたいな、いい?」


蓮はあっけに取られて2人を見ていたが、慌てて美香に返事を返した。


「あ、ごめんね。
来週は仕事で地方に行かないとならないんだ。
真央と2人で行くといいよ。」


「ほらね。
わたしが言った通りでしょ?
蓮は忙しいって、さっき教えてあげたのに。
ここ…押すの?
ねぇ、美香ちゃん!
もう1回初めからするのって、これ?」


「だって!真央ちゃんの言う事あてにならないし…
違うよ、これ押すの。
うん、そう…」


大喧嘩して自分の胸の内をさらけ出した2人は、思っていることを素直に相手に伝え合う。

お互いを認め合ったのだ。


血のつながりがあるのも、急速に親しくなれる一因かもしれないと蓮は思った。

まぁ、2人は同じ年だから。
何かと対抗意識を持ち、お互いにぶつかり合ってしまう。

しかし、ぶつかりながらも寄り添う2人の様子が微笑ましく、羨ましくも感じた。