飛べない黒猫

「ヤキモチ?
…真央ちゃんも蓮さんが好きなの?」


「うん、大好き。
お父さんとか、お母さんとか、洋子お母さんと同じ大好きと思ってたけど。
ちょっと違うかも。」


「馬鹿ね、そんなの当たり前じゃない。
ほんと、真央ちゃんって子供なんだから…」


美香の鼻をかむ音。


「わかった!
じゃあ、正々堂々とライバルだね。
そのかわり、どっちが振られても文句無し。
あたし達は仲良くしよう。
…ま、どっちとも振られる可能性ありだけどね。」


美香が笑った。


「お兄ちゃんが言うの…
蓮さんは、やめておけって。
蓮さんのお父さん、人を殺したんだって?
洋子おばさんも強姦されたって…」


「…。」


「真央ちゃんも知ってたんだ。
やっぱり、本当だったんでね…
でも、そんなの関係ないもん。
蓮さんは何にも悪くないし。
火傷の跡もワイルドでカッコイイよね。
指だって、生活するのに支障無いし。
何も問題ないよ、ね?」


「うん、問題ない。」


「そうだ!ケーキ。
メルディーユ・プチのイチゴショート。
やばウマなんだから。
蓮さんと食べたかったけど、いないし。
しょーがない、2人で食べよっか?」


「うん!食べる。」


廊下で蓮と青田は、顔を見合わせる。
「やっと出番のようですね。」青田はそう言って笑った。