飛べない黒猫

２人を残して家を出てから1時間経っていた。
簡単な打合せをを終えて、蓮は家に戻った。


青田の車があった。

3人で仲良くお茶でもしているのかと思い玄関を入ると、青田が廊下に座り込んでいた。


「やあ、おかえり蓮くん。」


「いったい…どうしたんですか？」


急いで靴を脱ぎ青田の側に寄ると、青田は苦笑いして言った。


「美香ちゃんが来ているみたいで…
2人、何か言い争っていてね。
なんだか、居間に入ることが出来なくて。
おさまるまで待機していたのだよ。」


小さな声でそう言って、居間の方向を見た。




…2人の声が聞こえてくる。



「そんなこと…
美香ちゃんに言われなくてもわかってるもの。」


「わかってんなら、実行すれば？
結局やらないのってさ、わかってないのと同じなんだから！
真央ちゃんって、そーゆーとこあるよね。
甘えてるだけじゃん。」


「甘えてなんかいないっ。
甘えてるのは美香ちゃんじゃない。」


「あたしの何処が甘えてるってゆーのよ！」


青田がささやいた。


「お互いへの不満を言い合っているようなんだ。
一方的でなく、真央も言い返し、攻撃している…」


青田は優しく笑った。


「感情を内に秘める子なのにね…
兄妹げんかみたいだ。
無茶な内容なんだけど、本音でぶつかっている。
思いっきりやらせておこうと思って、待機しているのだよ。」