飛べない黒猫

昨夜降った雨は上がり、濡れたアスファルトは、照りつける太陽の陽射しで急速に乾いてきたようだ。

真央は走り去るタクシーが見えなくなるまで、必死に手を振り続けていた。


「さあ…家に戻ろうか。」


蓮は真央の肩に手を添える。


「うん…行っちゃったね。
寂しいな。」


真央は、走り去った車の方向を、なごり惜しそうに眺めたままつぶやいた。


「部屋に戻って、もう一眠りしてきたら?
明け方まで話し声が聞こえていたから…眠いでしょ。
ずっと、和野さんと話していたの?」


「うん。
色々話したよ。
話しが尽きないの…
話したいことが、どんどん出てきて、気付いたら明るくなってた。」


「はは…女子会だね。」


「うふふ、そうだよ。」


真央は笑った。


「そろそろ締め切り近づいてきたのに、この2〜3日は全然作業出来なかったから…
今日は、このままサンルームにいるつもり。
蓮は仕事?」


「今日までの仕事、朝イチで仕上げたからね。
データーは送ったし、連絡入るまでは部屋で少し寝るよ…」


蓮は大きく伸びをする。
そして玄関のドアを開けて、先に真央を入れた。


「ところで、修正かけたトコ、うまくいってるの?」


今回のステンドグラスは、花火の作品だった。
もう8割方出来上がったという時に、真央は大幅に修正をかけた。

水面に映った花火を蝶で表現し直す事にしたのだ。