飛べない黒猫

真央は困った顔をして、考え込む。
視線を落として、また和野の顔を覗き込んだ。


「あの…自分でも考えがまとまっていなくて…
うまく伝えられるかな。」


「いいのよ、言葉に出るまま言ってご覧なさい。」


深刻な顔で、すがるような瞳で和野を見た。


「わたし、嫌な人になってしまったみたいなの。
きっと…話せるようになって、ステンドグラスも賞なんか取っちゃったから…
いい気になって天狗なの。」


「あら、あら、何を言い出すかと思ったら…
いいんじゃない?
少しくらい天狗になっても。」


和野は気が抜けたのか、可笑しそうに笑った。


「違うの…
人の好意を疎ましく思ってしまうの。
高慢になったの、きっと…」


「どんな好意を疎ましく思ったのかしら?」


和野は笑うのをやめて、狼狽える真央の顔を見つめた。


「今日の食事会で、美香ちゃん…いとこの美香ちゃんが話しかけてきたの…」


真央は学校祭に誘われた時の事を、出来るだけ詳しく話した。


「なんか、美香ちゃん…馴れ馴れしくて。
嫌な気持ちになったの。
今、思い出しても嫌な気持ちになる…
美香ちゃん、子供の頃からそうなの。
わたしのお人形取ったり、読んでた絵本取ったり。」


真央は、溜息をつく。


「でも…美香ちゃんは、わたしに意地悪しているんじゃないの。
ひとりでいるわたしを気にして遊んでくれているの。
分かってるのに…
美香ちゃんの気持ち分かっているのに、嫌って思ってしまう…」