飛べない黒猫

食事会が終わり、家に戻った真央は和野の部屋を訪れた。

明日、田舎に戻る和野は、荷物の整理も殆ど終えているようだった。


「思った以上の荷物。
5年ですもの…物も、思い出も増えてあたりまえね。
思い返しながら整理していたのよ。
だから、時間がかかってしまって…」


和野は真央に折り紙の花を見せた。


「真央さん、覚えているかしら?
誕生日にプレゼントしてくれたのよ。
夕食の後片付けが終わって部屋に戻ったら、ドアにはさめてあったの。」


真央は折り紙を受け取り眺める。
そう言われると、見覚えがあった。


「小学生の時。
和野さんが来てくれた年だ…
思い出した!」


真央はチューリップの形に折ってある花を開いた。


まだ幼いいびつな字で【いつも、ありがとう和野さん。
これからも、色々な事を教えてください。】と色鉛筆で書かれていた。


「最初は気が付かなかったのよ。
中にメッセージが書かれていたなんて…
この、お花…本のしおりにして使っていたの。
しばらく経って…半年くらい後だったかしらね、ほら、ここ…」


和野が花びらの折り返している箇所を指差す。


「文字の端がチョットだけ見えるでしょ?
それで、何かしら?ってめくって見たら、文字が書いてあって…
慌てて開いてみて、手紙になっていたって気がついたのよ。」


「あはは…そうだった。
わたし恥ずかしくて…見えないように折り紙に書いて折ったの。
本当は手渡ししたかったけど、それも出来なくて…
コソコソとドアに挟んでおいたの。
ふふふっ、子供だよね。」


真央はクスクスと可笑しそうに笑った。