飛べない黒猫

「美香さぁ、おまえ強引すぎ…
真央は苦手じゃなくて、ビョーキなの。
知ってんだろ？」


蓮は顔をしかめる。
直哉は真央を気遣っているのか、それとも、わざと傷つけてるのか。


「別に強引じゃないもん。
もう…お兄ちゃんは関係無いんだから、口をはさまないでよ！」


美香はふくれっ面で、プイッと横を向いた。

直哉も美香も言いたい放題だが、悪意は感じられない。

確かに、状況が好転している今、学校祭に行ってみることは、真央が学校生活を身近に感じられる良い機会であることは間違いない。

蓮は真央を見る。
目が合った。


「あ…せっかく美香ちゃん誘ってくれたし。
ちょっとだけ行ってみようかな。」


真央がボソッと言う。


「えっ…マジで？
やったー。
じゃ、蓮さんもね！約束っ！」


今度は蓮に駆け寄り、腕をからめる。


「…やっぱり、結局そーゆーことなんだろーが。」


直哉は、やれやれ…と、つぶやき美香を蓮から引き離した。


「すみませんねぇ、蓮さん…
こいつの魂胆みえみえ。
俺も行きますから。」


「えぇーっ！何で？
来なくていいって。」


「おまえの暴走を管理しなきゃならないでしょ。
蓮さんに、迷惑かけるわけにはいかないの！
俺、来年から青田建設にお世話になる身なんだから…」


美香は、“迷惑じゃないし…”　と唇をとがらせた。