飛べない黒猫

気配を消すように静かに、そして直哉や美香と目を合わせないように小さくなって食事をしていた真央は、突然、自分が話題の中心になってしまい面食らっていた。

美香が腕をからめてきた瞬間から、うつむいた姿勢のまま目を見開き固まっている。


「もう、真央ちゃんったら！
黙ってないで何とか言ってよぉ。」


「…えっ？
あぁ、えっと。
………。」


「行くよね？
でも、ひとりじゃ心細いから蓮さんと一緒ならいいよね？」


「あ…ええと…」


明らかにビビっている。


「はは…美香ちゃん、
真央は知らない人が大勢いるところが苦手なんだよ。」


蓮がフォローした。


「でもね、蓮さん。
そうやって苦手だからって済ませているから、真央ちゃんはいつまでたっても苦手なままなんだよ。
甘やかしすぎ。」


真央をかばう蓮に少しムッとした美香は、強い口調で真央に言う。


「真央ちゃんも、このままでいいの？
学校にも行かないで、友達もいなくって…
ずっと家に閉じこもったまま、おばあちゃんになっちゃうんだよ。
おじさまは結婚して、蓮さんだって恋人が出来て家を出るかもしれない。
そしたら、ひとりぼっちよ！
まっ、真央ちゃんの家は、お金持ちだからね。
それでもいいのかもしれないけどさ…」


からませた腕をほどき、腰に手を当て仁王立になった美香は、上から目線で真央を一瞥した。

真央は、ゆっくり顔をあげて美香を見つめた。


「…このままじゃ、よくない。
わかってるよ。」


真央は小さな声で言った。