青空が広がり、遙か東の方向に真っ白な積乱雲が、むくむくと山のように立ち上がっている。

夏の空。


フレンチレストランを貸し切っての食事会は、30名を優に超えている。

近しい親戚ばかりだから気を張ることは無いと青田は言っていたが、蓮にしてみれば全く見知らぬ人ばかり…

覚悟はしていたものの、やはりジロジロと無遠慮な視線が集まり、遠巻きで容姿に関してのささやき声が聞こえてきた。



ウエルカムドリンクのシャンパンが振る舞われ、蓮は一気に飲み干した。


「…お料理食べる前に飲むと、酔っちゃうよ。」


隣でじっと座っていた真央が小さな声で言った。


「このくらいは平気だよ。」


カラになったグラスを置くと、すっと給仕がやって来て、タオルを添え馴れた手つきでピンク色に発砲する冷えたシャンパンを注ぎ足した。


真央はしきりに足元を気にしている。
初めて履いたヒールの靴が気になるらしい。

歩きにくいし、転びそうだよ…

店に着くまで、ずっと、そう言っていた。

濃紺のワンピースに生成のボレロを羽織っている。
胸にはムーンストーン。

時折、話しかけられるとニッコリ微笑み軽く会釈していた。


どこから見ても、完璧なお嬢様だ。


「そのワンピース、似合うね。
大人っぽく見えるよ。」


真央は得意げに微笑む。


「…大人ですもの。」


そして顔をしかめた。


「でも、足が痛いの…。
靴脱いでもいい?」