飛べない黒猫

秘書の言った言葉は、まさに青田が信条としていた事だった。

どっちにしようか迷う事は多い。
些細な日常での迷いもあれば、重要な商談での選択もある。


例えば、休日のスポーツジム。

久しぶりにゆっくりしているし、なんだか面倒な気持ちになる。
行きたくない…

日々の運動不足がたたり体重が増え気味だ。
このままじゃよろしくないからと、ジムへの入会を決めた。

どうするべきか。


青田はこんな時、困難な方を選ぶ。

面倒だけどジムに行く。
1時間汗を流し、身も心もスッキリとし満足する。

これが正解なのだ。



人は、ともすれば怠惰な方へと流される。
楽だから。

だが、それが間違いの元なのだ。


迷う時、大体の人は、本当はどちらを選ぶべきか分かっているのだ。

ただ、そうするには問題が多かったり、面倒だったり、体裁が悪かったり…
そういった事柄を回避させたいので、違う選択を考える。

そちらを選んだところで、結局問題は解決するわけもなく、後手後手に回しているだけなのに。



青田は自分が経験した中で「迷った時は、あえて困難な方を選ぶ」ことにより、会社を発展させ人脈を築いてきたのだった。



岡田とは親類であり、付き合いも長い。
だからこそ、きちんと話し合うべき時に、事実を確認しなければならない。

今がそのタイミングなのだ。

ほころびを放っておくと、亀裂は広がり修正できない状態になるだろう。



「悪いが、岡田君の息子さんの履歴書関係の書類一式を、見せてもらえるかな。
あと…人事部長を呼んで下さい。」


青田は読みかけの書類を机に置いて、秘書に言った。