飛べない黒猫

昼食を食べ終え会社に戻った青田は、秘書が運んできた書類の山に目を通す。

頭をよぎるのは岡田の言動と、陰で行っている裏切りの行為。

理由は明白だ。
蓮が邪魔なのだ。


青田は、洋子との結婚を考えるまでは、岡田に仕事を任せていこうと思っていた。

実際、岡田は社の為に良く働いていたし、真面目で堅実な性格は周りからも信頼されている。


ひとり娘である真央が、自分の後継者となり手伝ってくれたらと思う事もあったが、それは無理なことと諦めていた。

だが、蓮を息子として迎えた事や、真央の回復をまのあたりにすると、どうしても期待せずにはいれれなくなるのだ。

青田は一代で、この会社を立ち上げ大きくした。
手塩に育てた我が子と一緒。

大事に後を引き継いでくれる信頼のおける者に、託したいと考える。



岡田に対しての疑惑は、失望に変わっていった。
不信感を抱いた者と、果たして上手くやっていけるのか…

青田はため息をついて書類から目を離した。



来年卒業を迎える岡田の息子は、入社の内定が決まっている。

「どうしたものだろう…」


ボソリと呟いた青田の独り言が聞こえたのだろう、秘書がニッコリ微笑んで答える。


「迷った時は、あえて困難な道を選べ!
社長が以前おっしゃってました。」


「うーん、困難ねえ…」


青田は苦笑いして、書類に目を戻す。


「あ、そうだ…
後で岡田君が私のスケジュールの確認してくると思うから。
調整をお願いします。」


「はい、承知いたしました。」


気が重い食事会になりそうだな…
今度は秘書に聞かれぬよう、心の中で呟いた。