飛べない黒猫

「創作活動は、はかどってるの?」


真央はホットサンドにパクついたまま蓮を見て、コクリとうなずく。


「今…ガラスのカッティング中で…
気が遠くなりそう。」


「あははっ、アレは気絶しそうだよな。
芸術っていうより、職人の域だ。
俺には拷問にしか思えないけど。」


正確に切った型紙を貼り付け、ガラスを切っていく作業。
小さなガラスのカケラを、ジグソーパズルのように切って繋ぐため、数ミリのズレが絵の仕上がりを狂わせる。


「ふふっ…
でも、それがね、案外…癒しなの。」


「…癒し?」


「うん。
集中するでしょ、失敗しないように。
全神経がカッターに注がれるから。
余計な事は…何にも頭をよぎらない。
考えられない…」


「マジ、肩凝りそう。」


蓮が笑う。


「何にも考えないのって…
きっと、すごく、リフレッシュ出来る。
時間が経つのも、あっと言うまで…
ぐったりしちゃうけど、とっても気持ちいい。」


「ん…わかるよ。
作品作っている時の真央は、すごい集中しているもんな。
眉間にシワ寄せて、口はへの字で…」


蓮は顔をしかめて、下唇を突き出してみせた。


「…そんな、変じゃない!」


真央はプイッと横を向いて口を尖らせた。
そして、わざと眉間にシワを寄せて蓮を見る。

「あはは、変な顔!」吹き出した蓮を見て、真央も笑った。