飛べない黒猫

「未婚で子供を産んでるじゃないですか。
高校生で子供を産むなんて…」


岡田は、当然だ、と言わんばかりの勢いで言い返し、煙草に火をつけた。


青田は岡田を見て、しばらく黙り込む。
そして、ぽつりとつぶやいた。


「洋子が高校の時に妊娠した事、君に話していただろうか?」


「…あ、洋子さんの年齢から計算して、私が勝手に、そう思い込んでいたのかも知れません…」


岡田はせわしなく煙草をふかす。
右足を揺すり、動揺する気持ちを隠せずに目をそらしている。

動揺の理由は明白だった。

知っているのだ。
洋子がいつ妊娠したのか。



洋子は4月生まれ。
高校3年の18歳で妊娠したが、出産は卒業後の19歳になってから。

年齢の計算で19歳での出産となれば、通常は高校生で産んだとは考えないはずだった。


間違いない。
岡田が洋子の過去を調べ記者に情報を売ったのだ。



さっきも、青田は岡田にかまを掛けていた。

“記者が洋子の過去をネタに”…と話した時、岡田は食いついてこなかった。

岡田は、こまかく神経質な性格だった。
通常なら、過去のネタとは何だと問い詰めてくる。

しかし、全く興味を示さなかった。

知っていたからだ。



「誤解ですよ。
洋子は奔放なのではなく、純粋すぎるのです。」


青田は溜息をついて岡田を見る。

岡田は、数回ふかした煙草を乱暴に灰皿に押しつけ、一気に水を飲み干した。